木版画作家・長谷川鼠について

長谷川鼠は、建造物を題材に木版画を制作する作家です。
千葉県出身、1986年生まれ。


人々に親しまれてきた街の建物や風景を、木を彫り、和紙に摺ることで作品として残しています。

作品のコンセプトは、「趣き」「ご愛嬌」「思い出」。

そこに確かに存在していた建物や、そこで営まれてきた暮らしの気配までを、版画として静かに留めていきたいと考えています。

PROFILE

木版画作家 長谷川鼠
1986年生まれ
千葉県出身

主な受賞歴

2023年
・第72回 板院展 入選
・第69回 一陽展 特待賞
・第79回 ハマ展 鶴見画廊賞

2024年
・第73回 板院展 新人賞
・第9回 あおば美術公募展 優秀賞

2025年
・第74回 板院展 院友推薦

版画に込めている思い

今は、ボタンひとつで複製が生まれる時代です。
印影もまた、契約や証明のために何度でも繰り返し使われます。

けれど、どんな複製にも、必ず“最初のひとつ”があります。
そのオリジナルを生み出す営みこそ、版画における「彫り」だと考えています。

版を彫り終えれば、その作品はいつでも和紙の上によみがえらせることができます。
それは、制作当時の情景や空気を呼び戻すことでもあります。


アトリエ小判で手がける被写体は建造物です。
原板には、竣工当時から今に至るまでの時間や佇まいを、一彫り一彫り重ねていきます。

そこからにじみ出るのは、「趣き」「ご愛嬌」「思い出」。

この建物が確かにここにあったこと。
ここに人々の暮らしがあったこと。

その存在を忘れないために、木版画として残していきたいと思っています。

作品について

作品は、多くの方が小学校の図画工作で親しんだ木版画の技法をもとに制作しています。

彫刻刀で一枚ずつ手彫りし、水性インキを用いて、和紙に一版一回摺りで仕上げるモノクロ作品です。


使う色は黒のみ。
だからこそ、建物の凹凸、影の落ち方、屋根や壁の質感といった細部により意識を向け、懐かしさや哀愁、そしてその建物ならではの表情を描き出しています。


移り変わっていく町の景色を、版画として生かし続けること。
それもまた、この制作の大切な役割です。

一枚一枚に宿る価値

各作品にはエディション(シリアルナンバー)を付しています。

摺りの際のインキの濃淡などによって、一枚ごとにわずかな違いが生まれ、それぞれに異なる味わいがあります。

なお、エディション上限を超えて増刷することはありません。


限りある版画作品を通して、日本人の心にある懐かしさや、和の趣をしっとりと感じていただけたら嬉しく思います。